選定設計ガイド

1.要求仕様チェック

機械製作において、基本となる要求事項を整理する。

1.仕事
・・・物体の移動に必要な力 ・ 移動量タクトタイムを確認する。
2.スペース
・・・機械またはユニットにおける幅(W)、高さ(H)、奥行(D)を確認する。
3.周辺環境
・・・温度、湿度、雰囲気などの条件を確認する。
4.その他
・・・上記以外の制約を確認する。(耐用年数、寿命など)

2.動力伝達機構の決定

動力発生源(油圧、空圧、電動、エンジンなど)を検討し、効率の良い機構を決定する。要求精度に対して、機構、制御の両方で満足するかを確認する。


3.駆動源選定(モータの場合)

トルク

モータ容量(出力)と減速機構の有無、及び減速比が決定したらモータトルク曲線と回転数から発生トルクを算出して下さい。モータメーカー資料がない場合は下記の一般的な計算式によって計算して下さい。

トルク

安全係数 K
負荷の条件 K
慣性 小 モータの定格トルクの60%以下で使用の場合 1.5〜2.0
慣性 中 加減速の時間が長く、反転駆動の頻度が少ない場合 2.0〜3.0
慣性 大 急激な減速や衝撃、正逆転の頻度が高い場合 3.0〜5.0
メカロック入力 トルク値 Tmax < メカロック最大許容トルク


スラスト

メカロック入力スラスト荷重値 < メカロック許容スラスト荷重


トルク、スラスト

トルク、スラストの合成負荷がかかる場合は下記の一般的な計算式によって計算し、メカロック最大許容トルクと比較して下さい。

トルク・スラスト

メカロック入力合成負荷 Ts < メカロック最大許容トルク


(参考)トルクアップ

  1. メカロックを複数個使用する。(MT、MKTのみ)
    メカロックの数量により許容伝達力は比例して大きくなります。
    (複数使用の場合はハブ外径が異なりますので注意して下さい)
          (例) 2個→2倍 3個→3倍
    MA、MSA、MKA、MR、MSR、MKRは対向で2個使用可能ですが取り外しが困難になる場合があります。
  2. メカロック内径面及び軸表面を脱脂する。
    許容伝達力が10〜20%向上します。(注)テーパ面及びメカロック外周面は脱脂しないで下さい。
  3. メカロック特注品を使用する。
    アイセルでは顧客要求に沿った製品を設計・製作致しますのでご相談下さい。


(参考)トルクダウン

  1. 軸にキー溝がある場合、軸とメカロック内径非接触面の面積分トルク低下します。
  2. メカロックを完全脱脂するとボルト軸力が極度に低下し伝達力がカタログ値の30%以上下がることもあります。
    特にメカロックMSA、MSRなど、ステンレス製品は焼き付きにも注意が必要です。
  3. メカロックに塗布する油、グリスの種類によって、摩擦を極度に減少させる添加剤含有品が軸やメカロック内径面に付着するとカタログ値の50%以上下がることもあります。

4.軸・ハブ仕様確認

  1. 軸のはめあい公差と表面粗さ
    軸のはめあい公差と表面粗さ
    • 軸の推奨はめあい公差でφ35のみ+0.010公差(MN、MKN、MT、MKT、MC除く)
    振れを少なくしたい場合はh6を推奨します。
  2. 軸の材質
    メカロックのカタログ記載軸側面圧値×1.2以上の降伏点応力(または耐力)を有する材料を選定して下さい。

    ※MT及びMRシリーズは1.4以上

  3. 中空軸最大内径
    使用する軸材料の降伏点応力(または耐力)より、下記計算式にて最大内径を算出して下さい。
    中空軸最大内径

ハブ

  1. ハブの材質

    メカロックのカタログ記載、ハブ側面圧値×1.2以上の降伏点応力(または耐力)を有する材料を選定して下さい。

    ※MTシリーズ及びMRシリーズは1.4以上

    アルミ、鋳鉄ハブを使用する場合、メカロックは高い面圧のため、ハブ肉厚が薄い場合や、強度の低い材質を選定するとハブが拡大、または割れる恐れがあります。
    鋳鉄―引張強さ249Mpa以上の材質を推奨します。
    アルミ―引張強さ245Mpa以上の材質を推奨します。
    MBシリーズは高面圧のため、アルミ・鋳鉄の材質は適しません。

    鋳鉄ハブの場合はFCD450以上を選定して下さい。アルミハブは耐力が高くても締結時に拡大して十分な面圧が確保できない場合があります。
    ◎アルミハブには新製品MCシリーズをお薦め致します。
  2. ハブのはめあい公差と表面粗さ
    ハブのはめあい公差と表面粗さ

    振れを少なくしたい場合はh6を推奨します。
  3. ハブ最小外径(降伏点応力基準)
    メカロック各シリーズのページに記載されているハブ材の降伏点応力別最小外径一覧表より適合を確認して下さい。一覧表に記載がない材料の場合は降伏点応力の値を基準に比例計算で判断します。選定でご不明な場合は弊社技術窓口へご相談下さい。
  4. ハブ外径が小さく適合しない場合
    トルクに十分余裕があれば、ボルト本数を減らして面圧を下げることが可能です。ボルトができるだけ等配に近い形で残るように間引きし、トルク、面圧は比例計算で算出して下さい。
  5. ハブの設計及び加工について

メカロックシリーズ片テーパ形状のハブ加工の注意事項

ハブ加工の注意点

ハブ加工の注意点ハブ端面と内径の直角度・内径同士の同芯度を出すために同時加工を実施下さい。この直角度によりメカロック振れ精度に影響がでます。(Fig.1) メカロックのツバとインロー間のR部干渉をさけるため、ハブ端面をC0.5取って下さい。(Fig.2)

MCシリーズは(Fig.2)の貫通穴形状となります。


MT、MKTシリーズのハブ加工の注意事項

MT、MKTシリーズは振れを抑える機構がなくガイド部が必要です。Fig.4の様にハブに段付き加工を行いガイド部を必ず設けて下さい。

※2個使用される場合も同様です。

MT・MKTシリーズのハブ加工の注意事項

※ハブ内面に発生する面圧に耐えうるハブ最小外径はセンタリング用ガイド部(軸径の1/2以上)の有無でハブ最小外径寸法が大きく変わりますので、指定ガイド長が取れない場合は、必ずアイセルにお問い合わせください。


MN、MKNシリーズのハブ幅が取れない場合の設計上の注意点

MN・MKNシリーズのハブ幅が取れない場合の設計上の注意点

ハブ幅Bは、メカロックMN、MKN L1寸法のL1/2以上に設定して下さい。(Fig.5)

※許容ハブ幅 B = L1/2以上

※ハブ面圧 × L1/B < ハブ面圧196N/mm2の時、使用可能です。

※ハブ幅がメカロックよりL1より短い場合、ハブ固定位置はL1の中央または、ナット側に取り付けて下さい。

注)MN、MKNシリーズ以外はL1より短い場合は使用できかねます。

5.メカロックシリーズ選定

ラインアップページ(こちら)を参照いただき、用途、スペース、作業性、特長等から最適なシリーズを選定して下さい。(各シリーズの先頭ページに特長が記載してあります)
無電解ニッケルメッキ・ステンレスのバリエーションを追加し、アルミプーリ用アルミメカロックをラインアップしました。

標準カタログ品の洗浄脱脂や真空グリス塗布等のサービスも有料で行なっておりますのでお問い合わせ下さい。

6.負荷確認

  1. メカロックに曲げモーメントの荷重がかかる場合
    メカロックは原則として曲げモーメントを受けることはできません。
    ハブ形状の選定とメカロックの荷重を受ける位置を変更して頂くことで採用が可能となります。 メカロックに曲げモーメントの荷重がかかる場合
    ラジアル方向の荷重がメカロック外径部にかからない場合(Fig.6)の使用ではメカロックに曲げモーメントの荷重がかかり、軸のスリップ又は軸、メカロック破損の要因となります。
    ハブ形状の変更(Fig.7)又は、メカロック締結位置をラジアル荷重を受けられる位置に移動します。ハブガイド部を軸に接する部分を多くし、曲げモーメントを受ける対策も有効です。
  2. メカロックにラジアル荷重がかかる場合
    メカロックにラジアル荷重が作用する場合、下記式にて許容値を算出して下さい。ラジアル荷重Rによって発生する軸側面圧Pir・ハブ側面圧Porが締結による通常面圧P(カタログ値)の20%以下であれば許容できます。

    メカロックにラジアル荷重がかかる場合


7.最終チェック

メカロック選定及び詳細仕様の適合確認をします。
1.〜6.までの適合に問題がないか再確認して下さい。問題がなければ次の項目をチェックします。


軸・ハブ挿入深さ

軸挿入深さはメカロックを貫通するのが理想ですが、短い場合でもメカロックテーパ部以上(フランジやナットに軸端面がかかる位置)までは必ず挿入して下さい。挿入不足の場合製品が塑性変形し、再使用できないことがあります。
ハブはモーメント許容や取付を考慮して、メカロック挿入深さを決定して下さい。(段付加工によりハブ端面からボルトが突出しない方法やラジアル荷重中心点にメカロックが入る等、色々工夫し加工して下さい。)

※MRシリーズ・MNシリーズは内輪の長さ以上挿入してください。



バランス

メカロックは基本的にバランス取りはしていません。メカロック単体では使用はしないのでハブ、軸を含め組立後、機上にて動バランスを取ることをお奨めします。
6000min-1以上の高速回転の場合には遠心力により伝達力低下が考えられます。


雰囲気温度

メカロックの使用可能雰囲気温度は-40〜+150°Cです。

※アルミMCシリーズは-40〜+80°Cです。(温度が上昇すると伝達トルクが低下する場合があります。)


再使用

メカロックは正規の使用をした場合、30回以上の着脱が可能ですが、ボルトネジ面、座面が荒れることで軸力が3回目以降、徐々に低下します。100%の性能を求められる場合には3回目以降は新品のボルトに交換して下さい。

※ボルトは弊社専用品をご使用下さい。


8.購入価格確認

メカロックは部品点数、形状をシンプルにすることで低価格を実現しています。また、弊社独自の加工方法など、精度を維持しながら価格をおさえたコストパフォーマンスの高い商品です。最寄りの代理店に見積りを依頼して下さい。


9.メカロックご利用上の注意事項

はじめに

メカロックは、軸とハブをキーレスで締結する摩擦締結具です。所定の性能を得るためには、取付面の公差・面粗さ・適切な組付けが大変重要です。


トルクレンチの使用 / 規定トルクの把握

ロックボルトの締付は必ず校正したトルク調整目盛付きのトルクレンチを使用し、指定の締付トルク値(各シリーズの仕様表または同梱の取扱説明書でご確認ください。)で行って下さい。プレートタイプのトルクレンチは規定トルクの確認ができにくいため、スリップや変形などトラブルの原因につながります。


組付け / 設計時の注意事項

組付け / 設計時の注意事項MAシリーズ(MA、MSA、MKA、MB)、MRシリーズ(MR、MSR、MKR)の組付け注意点

ハブ背面に位置決めの段がある場合は、メカロック背面と段の間隔()を1mm以上取って下さい。(密着している場合、分解に大きな力を要しメカロックの取り外しや再使用ができなくなる可能性があります。)またメカロックのツバ部()とハブはスキマ0にして下さい。スキマがある場合、ツバ部が変形しトラブルの原因につながる可能性があります。

※MCシリーズやMNシリーズ等一部構造の異なる製品がございます。カタログや取扱説明書にてご確認下さい。


組付け時の注意事項 / 組付け手順

  1. 上記図面を参考にしながら、軸・ハブが完全に挿入されていることを確認して下さい。軸が完全に挿入されていない状態で締付を行うとメカロックが塑性変形し軸・ハブに挿入できなくなり、再使用ができなくなります。
  2. 位置決め後、ロックボルトの締付を行って下さい。ロックボルトを対角線の順に最初は軽く(所定締付トルクの約1/4)締付け、徐々に締付け力を増し(所定トルクの約1/2)その後所定トルクで締付けを行って下さい。最後に円周方向に順次締付けを行い、数回繰り返して下さい。ロックボルトが所定の締付けトルクで行われ、ロックボルトの締め忘れが無いことを確認して下さい。
締付け手順
  1. 対角に約1/4の所定トルクで締付ける。
  2. 対角に約1/2の所定トルクで締付ける。
  3. 対角に所定トルクで締付ける。
  4. 円周方向に順次所定トルクで締付けを数回行う。
  5. ロックボルトの締め忘れが無いことを確認する。

ステンレス仕様(MSA、MSR)のステンレスボルトを締付ける際は、ゆっくりと回転させて下さい。急激に締付けるとボルトのカジリ・焼付の原因となります。

MN、MKNシリーズのハブ移動量 / 取付時の注意点

※メカロックMN、MKNシリーズは構造上、締結時にハブが移動しますので、下記移動量を参考の上、位置決めを行って下さい。

MN、MKNシリーズのハブ移動量 / 取付時の注意点

ハブ端面の密着を確認軸挿入後、メカロックナット端面がハブに密着したこと及び軸がメカロックを貫通していることを確認して下さい。
ナットを軽く手で締め位置決めをして下さい。
更に手でナットを締付てハブと共回りしない状態にしてからトルクレンチを用いて所定トルクに達するまで徐々に締め付けて下さい。
締付ナットが回転しなくなったことを確認できるまで締め付けて下さい。

※つきまわりして締付が困難な場合はハブ側を固定し、初期締付のスキマを少なくするため、手でナットを回して内輪を引き寄せて下さい。軸クリアランスをなくした後、トルクレンチで締結できるまで締め付けを行って下さい。



取り外し

ナットを締めて下さい。ハブとナットの密着が解除され、その後さらにナットを緩めると外輪がナットに引き寄せられ内・外輪の締結が解除されます。


軸・ハブの清掃 / オイルの塗布について

軸の表面・ハブ内径のサビ、ゴミ、汚れをシンナー等できれいに拭き取り、オイルまたはグリスを軽く塗布してください。一部製品はオイル・グリスの塗布が不要なため下記表・図を参照いただき適正にご利用ください。 一部製品(MSA、MSRシリーズ)はグリスの種類により締付け効率が向上し軸・ハブの面圧が降伏点を超える場合がありますので、評価テストの実施をお勧めします。

メカロック オイル/グリス塗布一覧表

※MSA、MSRシリーズは軸及び内径にはグリスを塗布しないで下さい。



A郡:オイル/グリス塗布箇所
B郡:オイル/グリス塗布箇所


【警告!】モリブデン系、及び極圧添加剤入りのオイル・グリスは絶対に使用しないで下さい。許容トルクの大幅な低下、スリップの原因となります。

その他注意事項

  • 軸にキー溝がある場合、溝幅がJIS規格程度であれば使用できますが、許容トルクは約15%〜20%減少します。キー溝のカエリ・バリを除去してからご使用下さい。
  • 中空軸(パイプ)の場合、肉厚により十分な面圧が得られない場合があります。弊社にお問い合わせ下さい。
  • 指定以外のボルトは絶対に使用しないで下さい。ボルトの破損、それに伴う事故の原因になります。
  • 製品がご注文通りであるか、損傷が無いか確認して下さい。ご注文と異なる製品・損傷のある製品を使用した場合、作業者の損傷・装置の破損等の原因になります。
  • 再使用される場合、製品各部品の変形・欠損が無いことを確認した上で使用して下さい。
  • 特殊仕様の製品については、カタログ・取扱説明書の内容と一部異なる場合があります。販売店・当社までお問い合わせ下さい。

取り外しについて

取り外し用ネジ穴
  • 取り外し前に必ず安全の確認を行い、作業を始めて下さい。
    1. 動力源(電源)を切り、メカロックにトルク・スラスト力が加わっていないこと、及び落下の危険性が無いことを確認して下さい。
    2. ロックボルトを順次、徐々に緩めて下さい。緩めたボルトを取り外し用ネジ穴全部に入れ、対角線の順に均等な力で徐々に締めこむと分解できます。

    ※ロックボルトを急激に緩めたり、ボルト全数の抜き取りを行わないで下さい。一部の部品が飛び出し危険な場合があります。

  • 取り外しボルトに塗油して下さい。
  • メカロック取り外しの際は、必ず取り外し用ネジ穴を全数利用し、数回に分けて締付けを行って下さい。一部のネジ穴のみ使用した場合、内輪が変形する恐れがあり再使用できなくなります。